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しし神の森

2011/8

2011年の夏休み、皆さんはいかがお過ごしですか?
僕は、長年の夢だった屋久島に縄文杉を見に行ってきました。

今年の夏は、とても慌しい夏になりました。以前から取り組んでいる東北大震災の支援活動で週末に何回か仙台を訪れ、7/28-29には友達との約束だった富士山に登り、息子の部活の応援、バイクの免許取得のための自動車学校(止めときゃよかった)。身を削って頑張りました(まだ進行中ですが)。
しかし、忙しい時程アドレナリンは出るもので、念願の屋久島旅行にこぎつけました。そして・・・縄文杉と感動の対面です。

話は4年前、2007年に富士山に一人で登った時に遡ります。3回目の富士登山とはいえ、登山初心者の僕は案の定膝を痛め、山頂で途方に暮れていました。この夏、冷夏のため7月末なのに九合五勺付近は残雪がひどく、人気のない登山道で滑落に恐怖しながら前人の轍を踏みしめの登山でした。山小屋も八合目から上は営業せず、やっと登頂した山頂の郵便局もまだ閉鎖中、その時期には信じられないほどがらんとした山頂で、僕は彼に出会いました。

彼の名は、島津康一郎。なんと屋久島の山岳ガイドさんでした。当時、彼は日本百名山の連続登はんの日本最短記録に挑戦中でした。その後、彼は48日間という驚異的日数で、百名山全ての登拝を終了しています。その活動は、ヤクシマーズのHP : https://www.yakushima-zu.com/ で確認出来ます。

彼はプロの目で、すぐに僕の足の異変に気がつき、声をかけてきてくれました。なんて親切な人がいるんだろうと感動し、彼にケアしてもらいながらの下山中に話が進み、お互いの健闘を讃えあい、屋久島での再会を約束しました。登山初心者の僕が言うのも変ですが、山というのは不思議な所で、友情や信頼が短時間で成立するところのようです。

 

あれから4年、約束を果たすべく家族とともに屋久島を訪れました。

屋久島の素晴らしい自然は、屋久杉だけでなく、海がめの産卵地の浜、九州最高峰の宮之浦岳に代表される登山ルート、渓谷の美しさ(泳げる自然のダムもあり)、山道で普通に見かける鹿や猿達と、素人目にも盛りだくさん。世界自然遺産の評価にいつわりなしです。

何より、南の島にありがちな、人々のゆるい感じがあまりないのです。人々の印象はとてもきっちりして、世界遺産の関係かもしれませんが、公衆トイレは驚くほど清潔で、眼のつく所にゴミもありません。それは沖縄の人たちの底抜けの明るさとちょっと違うのですが、僕にとってはすごく快適な場所でした。微笑みの島と呼びたくなるところ、といっても大げさでない感じです。

 

さて、いよいよ縄文杉です。

縄文杉は海抜1281mの斜面に鎮座する、樹齢三千年とも七千年ともいわれる、胸高囲16.2m、樹高25.3mの巨木です。そこにたどり着くには標高594mの登山口から片道10km、標高差700mの山道を、往復10時間以上かけて歩かねばなりません。

8月18日、僕達家族は登山口に上る4時40分の始発バスに乗るべく4時過ぎにバス停に到着し、島津さんと4年ぶりに再会しました。そしてバス移動後、まだ真っ暗な登山道にその一歩を踏み出しました。最初の2時間は趣のあるトロッコの線路の上を歩きます。トンネルをくぐり、橋を渡り、 Stand by me の映画を体感した後、いよいよ山道に入ります。大分整備された山道ですが、素人にはきつい! もののけの森の風景に抱かれた3時間の登山の末、驚くほどの巨木がついに姿を現しました。

 

太古の森の奥の白く老いた神は、悠然と僕らを迎えてくれました。幾千年の時を経て、今なお力強い緑を枝々に纏い、空へそして天へと伸びる意思を感じさせます。それは彼や森の全てが、命をつなぐもの、命を伝えるもの、命を導くものであることを示しています。この森の時間は人の諍いの無意味さをゆっくりと教えてくれます。

富士山ほどではありませんが、神様の周りのわずかなスペースに大勢の登山客がにぎやかに集まる光景は、厳かというよりも、つながりや絆を感じさせる暖かさがあります。そして神様のそばで食べるお弁当のおいしかったこと!疲労した体に光が流れ込むようです。

往復で二度脇を通るウィルソン株という400年前の切り株もかなり力をもらえるポイントで、森の中でもとても素晴らしい場所にあります。森林浴のエッセンス、フィトンチットが満ち満ちています。

 

この素晴らしい環境は、島津さんをはじめ島の人たちの肌理細やかできつい努力によって守られています。せっかくの世界遺産を確実に次の世代に残すために、僕らも少しでも協力したいものです。それは屋久島だけでなく、全ての世界遺産に、そして僕らの生活環境に必ずいい影響をもたらします。

お金と知恵と、ゴミを出さない小さな努力。永遠の課題ですね。

それでは皆さんも二度とない2011年の夏を、大切に楽しんでください。