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レーザー治療、睡眠時無呼吸症候群

blog ナゴブロ 院長ブログ

東西文化の融合

2020/12/04

2020年、今年は医療者としても生活者としても新型コロナウィルスに振り回された年でした。
クリニックとしてもブログが少なく、世相から来る僕自身の元気のなさが反映されてしまったかと、反省しています。
さて、毎月1回FMサルースで映画紹介をしていますが、11月の映画紹介でお話ししたアメリカ映画が印象的だったのでブログにまとめます。

2019年のアメリカ映画、フェアウェル。
それは東洋と西洋の文化の違いを、映画というフィルターを使って丁寧にそして優しく世の中に伝えた物語です。

西洋文化と東洋文化の違い、それは日本にとって明治以来の大きな課題です。明治以来、西洋化・欧米化という命題に、日本古来の文化をどう落とし込むかにわが国は腐心してきました。
あえて大きなタブーを作らずに外来文化を受け入れ、その受け入れてきた事すらも日本の伝統と言う。
寛容で、ある意味前衛的で柔軟とも言えるこの考え方は、私たち日本人の大きな強みでしょう。その気質を新しいデジタルの時代にどう適合し伸ばしていくかが、日本にとって大きな宿題になります。もちろん日本だけではなく、世界にとっても大きな課題で、それを解決することは世界の覇権に関わります。現在日本がかなり立ち遅れている事は、厳しい現実です。
今世界においての西洋と東洋の文化の軋轢。それはアメリカと中国の関係に象徴されるでしょう。

今年の大きな世界のイベントの1つ、アメリカの大統領選挙がありました。
アメリカ大統領ドナルドトランプは、中国との対決をあからさまにし、中国も新たな覇権国へ野心満々に世界戦略を行っています。

新たな冷戦を象徴されるアメリカと中国の衝突は、20世紀後半と21世紀初頭のキリスト教とイスラム教の文化衝突を思い起こさせます。
そこにはたくさんの大きな悲劇を生みました。
その中で私たちも、世界に誇る日本人・中村哲先生を失いました。
二度と起こしてはいけない悲劇。
今、アメリカと中国の新しい文化経済衝突でこれから何が起こるのか、世界中がハラハラと見守っている最中と言えるでしょう。

さて映画です。

ルル・ワン監督、主演アークワフィナはこの演技でゴールデングローブ賞主演女優賞受賞、中国韓国ハーフの女優です。

物語は中国からアメリカNYに移住した一家の娘を主人公に展開します。受けた教育と生活様式考え方は普通のアメリカ女性、見た目はまんまアジア人ビリー。祖母はまだ中国在住。彼女は4歳で両親とアメリカ移住しますが、おばあちゃん子で、今も毎日のように祖母と国際電話をしています。
ある日、祖母の妹からビリーの父へ祖母が癌と連絡が入ります。
中国では本人に癌の告知をしない。死の恐怖と絶望を本人に与えないように。
日本含めた西洋的な考えでは、基本告知をする。残された時間を本人に伝えることによって、本人に最後の時間を有意義に過ごさせるために。
30年前、私がまだ研修医の頃まで日本もがんの告知をしていませんでした。もしくは家族に本人に伝えるかどうかを決めさせていた。多くの場合、家族は本人告知を望みませんでした。
そうしたことで、日本が西洋的な考え方に変化してきたのかなと改めて気がつきます。

中国ハルピンの日常、習慣を垣間見れます。墓参りで家長として仕切るおばあちゃんはとても素敵で、お供え物の仕方も独特。

映画の中で主人公の父は言います。
西洋では個人の命はその個人のものだ。
東洋では個人の命は家族みんなや社会のもの。家族は個人の命に責任を持つ。社会の平穏を保つために。
どちらも正しい考え方です。そしてどちらが美しいかは個人と社会の考え方によります。
病気のおばあちゃんが孫娘に言います。
人間の価値は、何を達成したかではないの。どう生きたかなのよ。

映画の中で、主人公のいとこが日本人の娘との結婚式で歌うのが、名曲・竹田の子守唄。
1972年のヤマハ・ポプコンのグランプリ曲です。演奏・赤い鳥。小田和正擁するオフコースは第2位、チューリップ財津和夫は第6位でした。
山本潤子さんが歌うこの名曲は今YouTubeで流れています。
30年前に初めてこの曲を南米の大地で聞いた時、本当に驚きました。
長く放送禁止となってきたこの曲。
その悲しい歴史、私たちはまたたやすく検索できます。21世紀、時代そして日本は大きく変わりました。
調べると、実はこの曲は1975年にジュディ・オングさんが中国語で歌ってヒットしたそうです。訳詞はジュディのお父さん。
京都の貧しい娘たちのわらべ歌が、アジアで広く歌われ、時を越えてアメリカの映画の挿入歌になる。
世界はどこかでつながっています。
そのつながりに、大国の大統領によって分断された世界、ウィルスによって閉じ込められた世界の中での遥かな希望を感じます。
映画って、素晴らしい。


西洋人からの日本のイメージ?