ナゴブロ【ラブ・アクチュアリー&メリー・クリスマス】

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[掲載日:2018/12/22]

ラブ・アクチュアリー&メリー・クリスマス

今年もいろいろ盛りだくさんの1年でした。
毎月1回のFMサルースへの出演も3年を数えます。映画解説という普段の診療とは違う仕事は、私にはいつも刺激的です。

11月の話題は「ボヘミアン・ラプソディー」。大ヒットしたフレディとクイーンの物語でした。高1の時、ロックバンドに参加して初めて演奏した曲の一つがクイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」。新宿のジャムというライブハウスでした。演奏を途中で失敗してしまった酸っぱい思い出。
10代の思い出が走馬灯するこの頃。人生が残り少ないのかと心配になります笑。
気を取り直して12月はクリスマス映画を紹介しました。

選んだのは「ラブ・アクチュアリー」。2003年、リチャード・カーティス初監督作品です。カーティスは脚本家出身のイギリスコメディー界の重鎮で、日本でいうと三谷幸喜ですね。上品でウィットに富んだ上質の笑い。ロマンティック・コメディーの達人。「フォー・ウェディング」「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」と言えば分かりやすいかな。ちょっと元気が出るラブコメ。そして「Mrビーン」の脚本。ローワン・アトキンソンの驚異の笑いを作り上げた職人です。
カーティスはオックスフォード卒のインテリで、ビーンもオックスフォード理学科大学院卒の、若い頃からの盟友同士。

さて、映画は「グランドホテル形式」と呼ばれる群像劇で、たくさんの登場人物のエピソードで出来上がっています。それも、今をときめく名優のてんこ盛り。
フュー・グラント
(首相役、オックスフォード卒カーティスの4年後輩、ラブコメのプリンス、ノッティングヒルの恋人、ブリジットジョーンズの日記)
リーアム・ニーソン
(少年の父役、スターウォーズのクアイ・ガン・ジン、96時間)
コリン・ファース
(作家役、ロンドン大、ブリジット・ジョーンズの日記、英国王のスピーチ、キングスメン、マンマ・ミーア)
エマ・トンプソン
(社長夫人役、ケンブリッジ卒、ハワーズエンド・アカデミー主演女優賞、いつか晴れた日に・アカデミー脚本賞!、日の名残り)
アラン・リックマン
(社長役、ダイハードのテロリストのボス、ハリポタのスネイプ、16年没)
ビル・ナイ
(ビリーマック、カリブの海賊のタコ船長デイビイジョーンズ)
ローワン・アトキンソン
(店員役、オックスフォード院卒、Mrビーン!)
キーラ・ナイトレイ
(新婦役、カリブの海賊のエリザベス、わたしを離さないで、プライドと偏見)

ゴージャスな名優達がいい脚本で演じる映画。それだけに共感できるキャラや自分に響く場面が必ずある映画です。
僕が気になったエピソードは2つありました。
デザイン事務所の社長アランの妻は首相の妹エマ。家庭と仕事で成功し社会的地位もある彼の前に突然現れた、エロさ全開の秘書ミア。静かに訪れる中年の危機。それは決して不倫願望ではない、自由への憧れでしょう。若さへの憧れといってもいい。社長が社員にそれも秘書に手を出したらどうなるか当然理解している分別のある大人のアラン。芸術の永遠のテーマである恋愛、今ここではない何処かへの旅や冒険、しかしもう自分に訪れることはないはず。それがある日突然目の前に冒険の扉が開いた時の、愛すべきおじさんが取り乱す哀愁の姿。
話の展開がうまい。うますぎる。
エマとデパートに買い物にいくアランは、エマに気づかれないようにミアへのプレゼントを買おうとするが、そこに立ちはだかる爆笑店員・Mrビーン。空気が全く読めないビーンには善意しかないのですが、気の毒なアランのささやかな夢は敗れ去るのか。
そして夫の冒険心に気がついたエマの絶望。それは人生が終わるレベルの絶望ではなく、緩やかにやって来る老いへの恐怖です。女性としての賞味期限が切れることへの漠然とした痛み。美人だとちやほやされた過去を持つ人が感じる、若さへのジェラシー。むしろおブスちゃんや勘違いさんの方が幸せというアイロニー。がっかりクリスマスプレゼントのジョニミッチェル(その伏線のエピソードも深い)のCDに涙する、エマトンプソンの演技の上手さ!

もう1つが、映画の最初からの道化役でいい味を出す、ビリーマック。
彼は落ちぶれた元ロックスター。彼が起死回生の一手としてヒット曲の焼き直しのクリスマスソングを発売。もう失うものがない老獪な大御所は、TVでもはちゃめちゃな言動を繰り返すが、それが世間の評判となり曲はヒットする。どたばた喜劇を皆がホロリとさせるオチに導く物語の絶妙さと、演じるタコ船長の貫禄。
かつてロックはキワモノ音楽でした。ビートルズがその地位を確立したロックは、それでも1970年代までは若者の跳ね返り音楽でしかなかった。かつて「クラッシックこそ音楽の王道」と、したり顔で言う大人がどれほどいたことか。ロックを聴いて育った子供達が大人になりジジイになり、ロックの名曲もエバーグリーンやスタンダードになったのです。今のロックやポップ音楽の評価は昔からあったものではないのだよ、若者達よ。映画「ボヘミアンラプソディー」が世界中で共感され大ヒットすることを、フレディは想像できたでしょうか。
むしろ今では、クラッシックを聞くことはマイノリティーであり、凝った趣味の一つになっています。バレエやオペラ・歌舞伎などは、身につけるべき文化教養というよりオタク趣味やスノッブ老人の世間逃避先ともいえます。絶滅危惧種にならないように保護が必要だし、そこに身を置く若者の方がよほどロック・スピリットがあるかもしれません。
現代の世相の中では、正統派と戦う反骨精神としてのロックはすでに死に、安全策の表現法にすらなっているのです。
ビリーマックというキャラは、かつてB級品扱いされていたロック音楽のスターとして、あくまで亜流の表現者としてのプライドを表しているではないでしょうか。
それは「文芸作品」と比べられると低い評価になりがちな、「ラブコメ」作品の製作者であるカーティス監督のプライドだともいえます。例えば少女漫画やライトノベルへの評価とも近いのかな。まだまだ正統派の表現にこだわりがちな「評論家」達の意見。その中でラブコメに真理を求める覚悟を持ったカーティスやコメディー界の人たちにとってもこの映画の大ヒットは痛快なものだったでしょう。そしてそういう思惑がなくても十分に楽しめる大人の作品なのです。
ぜひご覧あれ、そして素晴らしいクリスマスを!


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